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余は何故に「古道具屋」と名乗りし乎 [自己紹介]

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古い抜き型。人形作家さんの所からの荷物との事。布か革をこれで抜いたのだろう。古道具屋っぽい物ではある。実用性があまり無いからなかなか売れないだろうけど(笑)。

いろいろな方とお話ししていると、度々「アンティーク屋さん、骨董屋さんと古道具屋さんはどう違うのですか?」と質問される事がある。自分でも明確に説明するのが難しかったりしていたが、ようやく自分なりのきちんとした回答がまとまってきたので、記録しておこうかと思う。

まず基本的な言葉の定義を確認。「アンティーク(antique)」という単語はフランス語で、その語源はラテン語で「古い」を意味する「antiquus」。ではどのくらい古ければ「アンティーク」と呼ぶのか。その定義は実は欧米では明確になっている。1934年のアメリカで、アンティークとは製造された時点から100年を経過した手工芸品・工芸品・美術品の事を指すと明確に定義付けられており、「100年」が一つの線引きとなっている。今年2011年を基準とすると、1912年以前に製造された物が所謂「アンティーク」として定義付けられている訳だ。日本だと明治45年以前(大正元年以前)に製造されたものという事になる。

骨董品はどうかというと、こちらには「アンティーク」程明確な定義付けはないようだ。国語辞典などを見ると、「美術的な価値や希少価値のある古美術品や古道具類」というような説明がされている。つまり、ただ古いだけでなく、美的な、あるいは希少性といった付加価値が付いている物、という意味合いがあるようだ。

以上の2つの言語的定義から逆説的に考えると、製造から100年未満で、かつ美術的な価値も希少価値もない古物を、広く「古道具」と呼ぶ事になる。ちなみに古物商の中でも僕らのような家具や生活用品の古物を主として扱う業者は、「道具商」というジャンルに括られる。公安委員会から発行される鑑札にも「道具商」という表記がされている。出入りしている市場は「道具市場」と呼ばれる事が多いし、古いこの業界の先輩達は骨董屋未満の自分たちの事を半分自嘲気味に「道具屋」と言ったりする。そういった言語的定義から考えていくと、なぜ自分が「古道具屋」と名乗っているのか、名乗りたいと思ったのか、その理由が徐々に言語化されてきた。自分が店を通して提案したい価値観とは?何を商材として扱いたいと思っているのか?それを並べた時にどんな光景を見たいと思っているのか?それらの疑問の答えがある程度明確に言葉で説明出来るようになってきた。ような気がする。

先程述べた言葉の定義とは一旦切り離して、商売に対するスタンスの違いを羅列してみる。もちろん例外はあるとの前提で。まずはアンティーク、骨董屋から。「専門性がある」「付加価値を付け、それを踏まえて高値で販売する」「言語的な意味でのアンティーク、骨董の定義にある程度忠実である」「一部の先鋭的な店以外は市場価値が定まった物を扱う」「一部の先鋭的な店以外は市場価格に従った値付けをする」こんな所か。対して古道具屋は?「専門性はあまりなく、扱う物のジャンルは多岐である」「専門性が低いので、付加価値をきちんと付けた価格設定が難しい」「店主の主観により価格が設定され、扱う物には値段の相場が確立されていない物も多い」「中古品であれば比較的新しい物も扱う」といった感じか(もう一度言っておくが、もちろん例外はあるし、イメージがよくなって来たのか、最近は語感で「古道具屋」と名乗る店も増えているように思う)。

「アンティーク屋」や「骨董屋」さんは基本的にはジャンルごとに専門的な品揃えをしているお店がほとんどだろう。「イギリス・アンティーク」や「フランス・アンティーク」、「アジアン・アンティーク」や「和骨董」もしくは「中国骨董」であったり。または「アンティーク・ランプの店」であったり「美術書専門店」であったり。「いろいろな国のアンティークを扱っています」とか、「骨董・アンティークなんでもあります」なんて言われたとたん、なんだかあやしい臭いが漂ってくる訳で…。(笑)また、基本的に「アンティーク」や「骨董」と呼ばれる古物は体系的に価値が定められている場合が多い。それはもちろん100年以上という時間による洗礼や、作家性や希少性といった価値基準が背景にあるからだろう。値段がある程度体系付けられているジャンルがほとんどのように思う。専門性を持たせた品揃えだからこそ、そのジャンルに特化した値付けも可能という事だろう。

これらを踏まえた上で、自分はなぜ「古道具屋」と名乗るのか。つまり、自分が店を通して提案したい価値観とは?何を商材として扱いたいと思っているのか?それらを並べた時にどんな光景を見たいと思っているのか?といった問いに対する答えを。

古物商という業界のヒエラルキーとしては、買取の現場ではまず最初に入るのは骨董屋さん、そして骨董屋さんが入った後の雑多な物を扱うのが道具屋、という事になる。当然競りの市場でも骨董屋さんが強い。海外の物を扱うアンティーク屋さんは基本的に日本では仕入れをしない。したがって、必然的に古道具屋は骨董屋さんが目を付けた物以外を扱う事になる。でも、そこが面白いのだ。体系付けられたり付加価値が付けられていない物、リサイクル屋さんに並んでいそうなそれ程古くない物、それらに自分なりの価値を見いだすという行為。世の中にはアンティーク屋さんや骨董屋さんが扱わない古物の方が圧倒的に多いと思う。定義や付加価値に縛られていない雑多な多数の者達、そこから選んで値段を付けてお客様と向き合う、という行為にはより自由を感じるし、面白みも感じるのだ。

もちろん、家具を扱う古物商としての目利きではある訳だから、家具としての物の良し悪しやある程度の相場はわかる。だし、本当に何でもかんでも扱う訳ではない。ある程度の基準はある。個人的に思う基準は、やはり「まじめさ」だ。まじめに作られた物であるか、たとえ誰かの真似の様な物でも、単なるコピーであるか、それとも何かしら作り手のまじめな意志がそこに込められているかは何となくわかるものだ。それが感じられれば、どこの国の、どんな時代の、有名な作家やデザイナーの物でも、無名な作家やデザイナーの物でも、そもそも作家性など無い、職人が作った物でもそれは関係ないと言ってしまおう。安く仕入れることができればぐっと安い値段も付ける事もあるし、これは個人的に評価したいからこの値段で、と高い値付けをする自由もある。敷居の高さと低さが同居している面白みも感じる。

別に自分がオリジナルな価値観やセレクトセンスを持っているなんて事は言わないし言えない。でも、出来るだけ自由な価値観で物を見ていたいとはいつも思う。定まった価値をなぞるだけの行為にはあまり興味を持てない。もちろん商売であるから、売れ筋のいわゆる鉄板的商品も仕入れる。だがその一方、だれか1人でもわかってくれる人がいたらいいな、と冒険して仕入れてみる商品もあるし、自分が仕入れなければ処分されてしまう古物もある。そんな風に冒険してみると、そんな物達に実際に反応してお買い求め下さるお客様がいらっしゃる。それはある意味とても痛快な体験だ。古い物の場合、仕入れた物はたった1人でも理解して下さるお客様がいればいいのだから。

当店にも有名なデザイナーがデザインした家具や有名な作家作の小物があったりするし、逆になんだかどこの国の物か、何に使われた物かもよくわからない古い物もある。それらが一つの空間に収まっている光景もなんだか楽しい。実社会と一緒で、様々な世代の、様々な顔を持つ、様々な属性の人達が一つの社会(空間)に同時に存在するというのはある意味自然なことで、やはり自由なのだ。圧倒的にアンティーク屋さんや骨董屋さんよりも、自分の考える「古道具屋」の方が自由だと思う。その自由さを楽しんでいる。

とにかく、どこかの誰か達によって確立された価値観に捕らわれる事なく自由な立場で、そして自分の価値観を信じて、信じられる価値観を自己の中に確立して、何よりその価値観をもって自己完結で終わらせる事なく他者とコミュニケーションする、そんな体験をしたいのかもしれない。それは他者の言葉を借りるのではなく「自分の言葉で語る」という行為だ。

その楽しさと、重要さ。それを何よりも尊重したいと思う。だから、あくまで自分は「古道具屋」と名乗っていたいのだ。

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コメント 4

あまの

すっきりしました!
「まじめさ」ですね
そして「自由」
こいつは扱いが厄介ですが価値がありますよね
これからのLET'EM INに期待します
by あまの (2011-07-30 22:31) 

hara_taka

なんかだらだらとした長文になってしまいました…。回りくどくてスミマセン…。

確かに「自由」は扱いが難しいですよね。でも基本的には特に「精神の自由」は非常に重要だと思っています。

今後の当店。。。ご期待に添えるかわかりませんが、出来るだけガンバリマス。今後ともどうぞよろしくです!
by hara_taka (2011-07-31 12:34) 

ひらおか

体系付けられてない、誰か一人でもわかってくれれば、っていうところ、共感しました。私もそういう価値観なので。
試験が終わったらまた遊びにいきます。
by ひらおか (2011-07-31 14:31) 

hara_taka

コメントどうもありがとうございます!

一人でもわかってくれる方がいればいいなんて、そんなわがままな商売なかなかないですよね。それが許される自由な商売だなあ、と改めて思いました。だからこその面白みを感じます。物とお金を介したコミュニケーションですね。

また是非お立ち寄り下さい。お待ちしております。
試験、がんばって下さい!うまくいきますようお祈りしております。
by hara_taka (2011-07-31 17:26) 

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